こんにちは統園鍼灸院 受付のあべです。暖かかったお正月から一転、ブルブルと震える寒さが続きますが皆様、お変わりありませんか?
今回は「患者さんを想いながら根気強く説明することの重要性について」というおはなしです。
当院の近所にお住まいのT夫さんは67才男性、運送会社の社長さんです。最初に来院されたのは7年前。ちょうど当院が六高台で新規開院して間もなくのことでした。
予約なしの飛び込みで来られたT夫さん「全身が凝り固まって痛い」という症状でした。その時は一回の治療で痛みはほぼ治まり、その後は「痛くてたまらない」と思ったらアポなし飛び込みで何回か来院され、やがてパッタリと姿が見えなくなりました。
フラリと来院あいてる~?
2年後のある日、受付にフラリとT夫さんが来られました。そして「うちの事務員が腰が痛いって言ってるんだ」と突然の申し出です。「えっ?T夫さんの治療じゃなくて事務員さんですか?」とお聞きすると「そうそう、何時に来たらいいの?」と答えるT夫さん。「え~っと、今日は○時が空いてます。」と伝えると「わかった○時ね。そしたらこれ代金ね。」とお金を受付に置いて出て行こうとされます。
「ちょ、ちょっと待って下さいT夫さん事務員さんのお名前聞かせてください~あと領収書とおつりをお渡ししないと~。」とあわてて追いかけると「えっ?ああ名前は○○さん。領収書いらないよ。おつりだけちょうだい」と振り返るT夫さん。そしてT夫さんは、おつりと領収書を受け取り、さっそうと帰られました。
予約時間になると事務員の女性がススッと受付に来られ、治療を受け「楽になったわ~」と喜んで帰られました。そういうことが3回ほどありました。そう、T夫さんは従業員の方に優しい社長さんだったのです。
調子悪いんだよねぇ~今あいてる?
ところが、その後はT夫さんも事務員さんも来られることはなく2年ほど過ぎていきました。ある春の日のこと再び受付にT夫さんが、自動扉のブーンという音とともに入ってきました。「T夫さん、大変お久ぶりです。どうされていたんですか心配してたんですよ。」とご挨拶すると「首がジ~ンと痛いんだよ。これから診てもらえる?」とあいかわらずマイペースの返事です。
院長に確認し「予約の方が優先なのでお待ちいただくことになりますが大丈夫ですか?」とお聞きするとT夫さんは「うん、待ってる。」と腕組をして待合のイスにドッカリと座りました。
この時、T夫さんご自身の判断では「首が痛い」ということでしたが、実は全身の関節や筋肉がガチガチで院長はかなり時間をかけて全身の治療を行っていました。T夫さんは何か感じることがあったのか2日後「念のためにまた来たよ~」と、あいかわらずアポなし飛び込みで治療に来られました。
この日は、帰られる時「T夫さん、何回か申し上げましたかと思いますが次に来られる時は予約のお電話をくださいね。お待たせしたり、混み具合によってはお断りしないといけないこともあるので・・・」と再度説明をしました。
またつらくなっちゃってさぁ~今あいてる?
再び1年がたった去年の秋のことT夫さんが、つらそうな表情で受付に来られました。院長も私も「あ~、伝わってなかったなぁ、予約のこと。」と少々あきらめムード。T夫さん本人は「今日は身体全部が痛いんだよ~」と顔をしかめています。
予約の方がいらしゃったので、しばらく待っていただき、お待たせすること20~30分経過後治療が始まったのですが「ひゃぁ、すごくむくんじゃってるじゃないT夫さん。これはひどい。全身ガチガチだわ。」と院長の声が聞こえてきます。「うん、そうなんだよ。」とT夫さんがうつ伏せのまま答えます。「これは、きつかったね~。つらかったでしょう?」と院長は治療を続けます。
しばらくして治療が終わり、受付に戻ったT夫さんに「身体軽くなりました?」と聞くと「うん、体重は重いけどね」とお得意のユーモアが飛び出しました。
あっもしもし○○だけど、予約とれるぅ?
それから1ケ月後、ついにというかようやくT夫さんから予約の電話がはいりました。 「腰が痛いんだよ腰が。いつ空いてる?」と。私は「○時が空いてます」と答えながら「すごいT夫さんが予約の電話をしてくれた」と内心びっくりしながらも、とてもうれしく思いました。
時間通りに来られたT夫さんは、いつものように「すごくむくんでるじゃない~?」と院長に言われながらも静かに治療を受けていました。お帰りの際「T夫さん、1回の治療で楽になってよかったですね~。」と言うとT夫さんは「ここの先生腕がいいからな」と小さな声で答えてくれました。
「T夫さん、そういうことは私じゃなくて院長に言ってくださいよ~」と言うと「あはははは~」と笑いながら帰って行きました。その後は1ケ月ごとに「腰が痛いんだよ、腰が。」「首が痛いんだよ。」などと予約の電話が入っています。
必要な情報は、わかって下さるまで話しつづけることが大事です
私は、T夫さんの心の中で「このレベルまで痛くなったら統園鍼灸院に電話する。」という「マイルール」が出来たのではないかと思っています。日頃、仕事などで忙しくされている方は、どうしても自分の身体のケアが後回しになってしまいがちですよね。
今回のT夫さんは、自分なりの心地良いルールを見つけるまでに、およそ7年間かかりましたが院長をはじめ私たち受付が、慢性的な痛みのある患者さんに対し「痛みがこのレベルに達したらプロに治療をゆだねる」という基準について伝え続けていたことが、ようやくT夫さんの心にストンと落ちたようです。
T夫さんのこれからの人生にエールを送りたいですそして今回のことで、患者さんにとっての必要な情報は本当に理解していただけるまで説明を続けることが大切なんだと学ばせていただきました。
最後までお読み下さりありがとうございます。 あべ