こんにちは統園鍼灸院 受付のあべです。
今回は「母親のあふれる愛情は、方向を間違えると毒になる」というおはなしです。
K子さんは24才のアルバイター。「食事がのどを通りづらく、特に人前ではひどくて困っている」と訴え、お母さんと一緒に来院されました。
待ち合いで順番を待つ間は、寄り添って何やら語り合う様子から「仲が良い親子だなあ~」と、ほほえましく見ていた私でしたが、院長の
問診が始まったとたん、その印象は一瞬にして違和感へと変わりました。
「この子は、ごはんを食べようとすると”ウッ”と詰まる感じがするんです。」「この子は、緊張すると咳が出て困るんです。」とお母さ
ん。・・・そうです。院長の質問に対して全てお母さんが答えているのです。しかも何故か腕組みをして。
「えっ?本人は?」と思った私がK子さんを見ると、やはり腕組みをしてお母さんに全てを任せた表情をしていました。
先生の前で、腕組みをして話をするという態度は恐ろしく違和感を覚えると同時に「治せるものなら治してごらんなさいよ」と言わんば
かりの挑戦的なオーラもちらほら。その辺りは院長も察知したとみえて、いつもは患者さんご本人だけを通す治療室へ二人を案内しまし
K子さんのお母さんは「娘はもともと食が細かったので、とにかくたくさん食べてほしくて二段重ねの弁当箱にたっぷりとおかずを詰め
て、学校へ持たせました。娘は、せっかく作ってもらったのに残すのは申し訳ないと無理矢理全部食べていて、そのうちに食事を
すること自体がつらくなってきたようなのです。」と話をされました。
さらに「今では、少しの量でも栄養がある物をと私が仕事の日でも、娘の食事だけはきキチンと作って出かけています。」と少し誇ら
しげに続けました。その間、K子さんは横で黙って聞いていました。
会話の8割がお母さん、院長が2割、患者K子さん0割という感じでお母さんひとりが頑張って「うちの娘が、こんなこと、あんなことでつらいと言ってます。」と状況説明を延々。
困った症状はカラー療法で
話が一段落したところで院長が「治療方法はいろいろ考えられますが、私のところではカラー療法という特殊な治療もやっております。
K子さんのように神経が繊細で胃腸の不調が主訴の方には、過去の経験上成果が良いので今日は、カラー療法というやり方で治療しま
※カラー療法については、前々回のブログ「過敏性腸症候群とカラー療法」のコンテンツで詳しく解説していますので、興味のある方はこちらも読んでみて下さいね。
治療後、院長は母娘に「今日は、これで終了しますので週に2回ほどのペースで様子をみさせて下さい。次回来られた時に、どんなことでもいいので何らかの変化があったら聞かせて下さいね。」で初回の治療が終了しました。
名付けて あえて無視療法
治療後院長が、ぼそっと「お母さんのゆがんだ愛情がK子さんを精神的に追いつめてるみたい。次回から、ちょっと戦略を立てないと・・・」と。戦略を伺った私は「なるほどお母さんをあえて無視。戦略かあ。」と妙に納得しました。
内容はこうです。治療前に、院長は患者さんの現在の体調をたずねるのですが、あえてK子さんに向かって話をするようにしました。
この日から、ようやくK子さんと院長の「1対1」の治療が始まりました。K子さんの症状は、来院のたびに”コロコロ”変化します。食事
は、のどを通るようになった感じなんですけど最近は「トイレが近い、のぼせる、手足が痛む、肩こり、不眠」など食事以外の悩みも多
院長は、K子さんに「あのね、自律神経が不安定だと今日は○○が変、今日は△△が変って、具合に体の不調が全身的にあちこち移動す
るんだよ」と自律神経の乱れが、身体に作用する話をわかりやすく説明していきます。
「あ~そうなんだ」「なるほど~」とK子さんは、うなずきながら相づちを返しています。
「なので、体の不調はいろいろあると思うけど、今いちばんつらいことに焦点をあてて、治療後それが少しでも”ラク”になったら”めでたし、
めでたし”ということでいきましょうね。」といっぺんに不調を解決することは出来ないし、ひとつ解決したらハッピーと思うことが大事。と
心が”ラク”になる話を展開していきます。
決め手は言霊療法
週に2回の治療を始めて数回経過した頃、院長がいつものように体調を尋ねました。このところは、どうも腰とひざが痛くてつらいようで
す。「どう、K子ちゃん?この3日間どうだった?」「まだ、痛いです。」と、あっさり答えるK子さん。
それを聞いた院長が、すかさず聞き直しました。「K子ちゃん、よ~く思い出して。ずーっと痛いままだった?」K子さんは、しばらく考
えて「あっ、寝ている時に痛みを感じてトイレに起きることはなかったです。」と答えました。
少しの沈黙の後、院長が話し始めました。「ね、K子ちゃんよく考えたらいい変化もあったでしょ?いい変化があったのに、よくないことだ
けを口に出して言ってしまうのは、実はK子ちゃん自身にとっていい事じゃないんだよ。」
さらに続けます。「K子ちゃん言霊(ことだま)って知ってる?」「知らないです。」とK子さん。「言霊(ことだま)というのは、昔からある考
え方で言葉が持っている力のこと。
例えば、ネガティブな言葉を使いがちの人は気持ちが暗くなりやすいし、無意識にポジティブな言葉を選んでいる人には、気持が前向きな
人が多いんだよ。」「だから、私はK子さんにも良い言葉を使う練習をしていってほしいわけ。そして、もっと自分を好きにな
ってほしいのよ。」
「とは言っても痛い所があるのは本当のことだし、体調に波があるのは当然だから、そこも認めてあげてね。ほら、ちょっと前に流行した
ありのままを認めるこれが大事だと思う。そうすると気持が不思議と楽になるよ~。」と院長が優しく語りかけます。
「はい。」と答えたK子さん。どうやら何かに気付いたようです。
3日後、来院したK子さんには、明らかな変化がありました。いつものように院長が体調を尋ねると「だいぶいいですけど腰が少し痛いで
す。」と具体的に答えています。次の日も「おなかの痛みはマシになりました。」「今日は、少し足が痛いです。」と見違えるような大
人の対応に。
受付でお話しても、しゃべり方や表情が年齢相応まで一気に成長したようです。
「これぞ言霊(ことだま)の力」ひとつ言葉が心に響くと、人は”スッ”と良い方向へ変わるんだとうれしく思いました。
さらに1カ月たち、週2回の治療が1回でも大丈夫になって、順調な回復がみられる先日のこと、私はK子さんに思い切って聞いてみまし
た。
「最近、K子さんの様子が変わってきたってお母さんおっしゃらない?」と。
するとK子さん満面の笑顔で答えてくれました。「はい、ごはんを食べるのが早くなったね。と言われます」
・・・そうでした私、そこで思い出しました。「そうだ、二人にとっての最大の関心事はごはんだったんだ」と。
心(意識)が変わり、体調が変わり、食べるという行動にも変化があらわれたのですが、お母さんは表面に出た結果しか見えてないのか
な?心が変わったから良い結果が出たという心の変化は、もしかして気付いてない
これは、子供を持つ親として改めて考えなければならない事象だと気付かされました。
親に心の余裕がないと、ついつい子供の行動(結果)に一喜一憂。この子は、なぜ○○なんだろう?と心(原因)の在り方に目を向けることの大切さを学ばせて頂いた気がします。
最後まで、お読みいただきありがとうございます。 あべ